2026年3月期決算留意事項
Seiwa Newsletter Feb. 2026 (Vol.122)
会計・税務の実務上のポイント
RSM清和監査法人 公認会計士 平澤 優
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はじめに
今月の Seiwa Newsletter では、間もなく始まる3月決算企業の期末決算に向けた留意事項として、当期から適用が始まる「金融商品会計に関する実務指針」の改正や、2024年年次改善プロジェクトによる包括利益の表示並びに特別法人事業税及び種類株式の取扱いに関する改正などを取り上げます。
なお、2026年3月期の期首から早期適用が認められている新リース会計基準等については、適用初年度の経過措置に焦点を当てたうえで、翌月のSeiwa Newsletter 3月号で解説いたします。
VCファンドの出資持分に係る会計上の取扱い
近年、ファンドに⾮上場株式を組み⼊れた⾦融商品が増加している一方で、⾮上場株式を時価評価しているVCファンドは一部に留まっています。国際的には公正価値による評価が、企業の現状及び将来性について合理的な分析を⾏うための⼿段であるとして広く利用されていること、及び、日本政府が2022年11月に発表した「スタートアップ育成5か年計画」において、公正価値評価の導⼊を促進し海外投資家やベンチャーキャピタルの呼び込みを進める旨が明記されたことにより、日本公認会計士協会、⾦融審議会等において公正価値評価の促進が議論されるなど、日本のベンチャーキャピタル業界において公正価値評価を導⼊する機運が急速に高まっています。これを受けて、VCファンドに相当する組合等の構成資産に含まれる市場価格のない株式を時価評価するよう、会計基準の改正が行われました。
適用対象となる組合等の範囲
適用対象となる組合等の範囲について、VCファンドに相当する組合等とそれ以外の組合等を明確に区分することは困難と考えられることから、VCファンドに相当する組合等を直接的に定義することはせず、次の要件に基づいて判断することとされました。
組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること
組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること
組合等への出資者である企業は、本規定を適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に本規定の適用対象かどうか決定します。上記の要件を満たすすべての組合等を一律に適用対象とする必要はありませんが、適用対象とした組合等への出資の会計処理は出資後に取りやめることはできないことに留意が必要です。
会計処理
決算時において、組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式について時価をもって評価し、評価差額の持分相当額を純資産の部に計上します。また、時価のある有価証券の減損処理に関する定めに従い減損処理を⾏います。
適用初年度の期首時点で適用対象となる組合等への出資を⾏っている場合には、構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式について時価評価し、評価差額の持分相当額を期首のその他の包括利益累計額⼜は評価・換算差額等に加減します。また、上記の対象株式について時価のある有価証券の減損処理に関する定めに従って減損処理を⾏う場合には、減損処理による損失の持分相当額を期首の利益剰余⾦に加減します。
注記
「時価の算定に関する会計基準の適用指針」第24-16項において、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資については、時価の注記を要しないこととし、その場合、時価を注記していない旨及び本取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額を注記することとしています。
本規定を適用する組合等への出資については、上記の注記に併せて、次の事項を注記します。 なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表における記載は不要です。
・本規定を適用している旨
・本規定を適用する組合等の選択に関する方針
・本規定を適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額
包括利益の表示
その他の包括利益の取扱いに関して、これまでに公表された複数の会計基準等で使用されている用語の一部が、連結財務諸表上の取扱いに関する記載に使用されるべき表現となっていなかったため、適切な用語に修正されました。
包括利益の表示に関する会計基準
これまでに公表されている会計基準等で使用されている「純資産の部に直接計上」、「直接純資産の部に計上」及び「直接資本の部に計上」という用語について、連結財務諸表上は「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」と読み替えるものとされました。
株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針
株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額は純額で表示しますが、主な変動事由ごとにその金額を表示する場合の例として「純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増減」等の用語が使用されており、当該用語は、個別株主資本等変動計算書と連結株主資本等変動計算書について共通で使用されるものでした。今回の改正では、連結包括利益計算書との連携が理解しやすくなるように、「当期発生額」及び「組替調整額」という用語に変更されています。
特別法人事業税の取扱い
「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」は、具体的な税金を挙げて当該税金について規定する税法を参照することにより特定して会計処理及び開示について定めていますが、改正前の本会計基準においては、特別法人事業税の取扱いについて個別の定めが設けられていませんでした。そのため、特別法人事業税の取扱いの明確化を図るために改正が行われました。
法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準
特別法人事業税(基準法人所得割)は、事業税のうち所得割額を標準税率によって計算した金額に対して課す税金であるため、所得に対して課される税金である点では事業税(所得割)と共通の性質を有しています。この性質を考慮し、事業税(所得割)と同様の取扱いを行うことを明確化する定義追加等の変更が行われました。
また、「法人税、住民税及び事業税」が表示科目の例示であることをより明確にする表現変更も行われました。
税効果会計に係る会計基準の適用指針
法定実効税率の算式に特別法人事業税率が含まれることが明確化されました。また、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、決算日において国会で成立している法人税法等に規定されている税率を使用する旨が明確化されました。

(波線:改正による追加部分)
種類株式の取扱い
2001年(平成13年)の商法改正における種類株式制度の見直しによって、優先株式をはじめとした種類株式の内容が多様化するとともに、その発行金額が増加しました。しかし、「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」の適用対象となる種類株式に関する定めが旧商法の条文を参照したままとなっていたため、本実務対応報告の適用対象となる種類株式の定義が、会社法第108条第1項を参照する形で定義し直されました。同条項により旧商法で認められていなかった種類の株式を発行することが可能となり、さらに設計の柔軟化が図られたことから、本実務対応報告の開発時には想定されていなかった種類株式まで適用対象が拡大します。
なお、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首より前に取得した種類株式のうち、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の前連結会計年度及び前事業年度の末日において保有する種類株式については、次のいずれかの方法を選択できます。
・従前の会計方針を継続
・改正実務対応報告を2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の末日から将来にわたって適用
・改正実務対応報告を2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から将来にわたって適用
外形標準課税
2004年度に資本金1億円超の大企業を対象に導入されたものの、減資を中心とした要因により、対象企業数は導入時に比べて約3分の2まで減少しています。このような背景から、現行基準(資本金1億円超)は維持しつつ、前年度に外形標準課税の対象であった企業が資本金1億円以下になった場合で、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合には課税対象とする補充的な基準が追加されました。
加えて、2026年4月1日以後に開始する事業年度から、親会社の信用力等を背景に事業活動を行う子会社への対応として、資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える企業の100%子会社のうち、同合計額が2億円を超える場合は課税対象となります。本条件に該当する子会社は、外形標準課税適用法人を前提とした法定実効税率を用いて税効果会計を適用する必要がある点に留意ください。
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