当ニュースレターは、RSM Global の英文ニュースレターの翻訳版です。日本語訳と原文(英文) に差異が生じた場合には、原文が優先されます。原文はこちらをご参照ください。

 

2025 年 9月 30 日に終了した四半期に発行された文書

2025 年9月30日に終了した四半期において、IASB(国際会計基準審議会)より発行された文書は以下の通り

文書種別

発行日

タイトル

有効日

実務指針

2025821

IFRS19号「公的説明責任のない子会社:開示」の修正

202711

IFRS19号は20245月に初めて発行された際、当該基準には20212月までに発効していた基準および改正のみが含まれていた。今回の変更により、現行の基準には20212月から20245月までに発行された基準も含まれることとなった点に留意が必要である。

2025930日に終了した四半期においては、414日にIFRS解釈指針委員会(IFRIC)は最終アジェンダ決定を発行しなかった。

 

IASBミーティング

当ニュースレターは以下の日程で開催されたIASB の会合における議論から生じた主要事項の要約である。

  • 202572224
  • 202592325

IASB が公表したアップデート全文はこちらで確認することが出来る。

 

リサーチ及び基準設定

企業結合―開示、のれん及び減損

IASBは、公開草案「企業結合―開示、のれん及び減損」における要求事項の追加・修正・削除に関する提案について、以下のことを暫定的に決定した。

IAS36号「資産の減損」への改正提案に関する議論において、IASBは以下の提案を暫定的に維持することを決定した。

  1. のれんを含む資金生成単位(CGU)またはCGU群が含まれる報告区分を企業に開示させることを要求する提案を維持すること
  2. 使用価値の算定にあたり、税引前キャッシュ・フローおよび税引前割引率を用いることを要求する規定を削除すること
  3. 使用価値の算定に使用した割引率が税引前か税引後かを企業に開示させることを要求する提案を維持すること

キャッシュ・フロー計算書及び関連事項

IFRS18号「財務諸表における表示及び開示」における経営者が定義した業績指標(MPM)の要件(これは当初、損益計算書上の業績指標にのみ適用されていた)を、キャッシュ・フロー指標にどのように拡張し得るかについての議論の一環として、IASBは、IFRS18号のMPM要件を、IFRS会計基準で特定されていないキャッシュ・フロー計算書上の指標に拡張することを提案すると暫定的に決定した。提案される要件は、MPMの定義および関連する開示要件の適用可能性を条件として、キャッシュ・フロー指標に適用される。

また、IASBは、MPMの定義のうち次の部分を(変更なく)キャッシュ・フロー指標にも適用する提案を行うことを暫定的に決定した。

a) 企業が財務諸表以外の公表コミュニケーションで使用する指標であること

b) 企業が財務諸表利用者に対して、企業全体の財務業績の一側面について経営の見解を伝えるために使用する指標であること

さらにIASBは以下のことを暫定的に決定した。

  • IFRS18号におけるMPMについての反証可能な推定(rebuttable presumption)を、キャッシュ・フロー指標にも適用されるよう拡張する
  • MPMの開示目的およびIFRS18号におけるMPMに関する特定の開示要件を、キャッシュ・フロー指標にも適用されるよう拡張することを提案する
  • MPMIFRS会計基準で定められた最も直接的に比較可能な小計または総額との調整項目(reconciliation)において開示される各項目について、税効果および非支配持分への影響を開示する要求をキャッシュ・フロー指標に拡張することは提案しない

キャッシュ・フロー情報の分解に関する提案について、IASBは以下のことを暫定的に決定した。

  1. 以下の関連性を強化すること

    (1) キャッシュ・フロー計算書

    (2) IAS7号「キャッシュ・フロー計算書」以外のIFRS会計基準に従った財務諸表の他部分での提示、または開示される情報

  2. 事業売却等で、継続事業から除外された事業からのキャッシュ・フローの表示の一貫性を改善すること

これらの決定は暫定的なものであり、IAS7号およびIFRS18号の改善を盛り込んだ次回(公表は2026年を予定)の公開草案パッケージに取り込まれる予定。実効適用時期はIFRS18号の発効日(202711日)に概ね合わせられる見込みで、早期適用が許容される可能性がある。

資本の特徴を有する金融商品

IASBは、公開草案で提案されていた「関連法令等が金融商品の分類に及ぼす影響」に関する要件を撤回することを暫定的に決定した。

 

また、分類に関する2つのテーマについていくつかのことを暫定的に決定した。

  1. IASBは、金融負債と資本性金融商品の再分類に関する提案要件について、以下のような(内容の)的を絞った精緻化(refinements)を行うことを条件として、提案を進めることを暫定的に決定した。

    (1) 当該要件が、(a)契約上の権利義務を新たに創設または消滅させるものでも、(b)契約条項を変更するものでもない変化に適用されることを明確化する

    (2)「契約上の取り決め(contractual arrangement)の外部の状況」とは、以下の両方を満たす事象を指すことをさらに明確化する

        i. 金融商品が分類された後に発生し、かつ

        ii. 企業の事業運営にとって重要である

    (3) 契約の実質が変化した場合、自己の株式を引き渡す義務を含む金融商品を金融負債から資本へ再分類することを企業に要求する

加えて、IASBは、原案で提案した要因に基づくアプローチ(factors-based approach)を、文章の改善およびその背後にある原則の明確化を条件に進めることを暫定的に決定した。

償却原価測定

IASBは、契約利率に付随する条件がある金融商品において、有効金利を決定する際に企業がIFRS9号の要件をどのように適用するかという問題について、これ以上の措置を講じないことを暫定的に決定した。

持分法

IASBは公開草案に関する再審議を開始し、以下のことを暫定的に決定した。

  • プロジェクトの範囲を拡大し、投資家が持分法を適用する際に取得関連コストをどのように認識すべきかを扱うこととする
  • ただし、範囲を拡大して以下を扱うことは行わない。
    • 事業を構成しない方法で重要な影響力(significant influence)を取得
    • IAS28号第1819項に記載された公正価値オプションの適格基準に関する扱い(ただし、審議会はこれらを明確化すべきかどうかは検討する)
  • 追加持分を取得しつつ支配的影響を維持する場合の持分法の適用に関する公開草案の暫定的立場からの救済措置を検討する

 

維持管理及び一貫した適用

引当金— 的を絞った改善(Targeted Improvements

IASBは、将来支出を現在価値に割り引く際に用いる割引率に関する公開草案の提案を再審議し、議論は以下の三つのトピックに分けられた。

1.割引率 — 必要な割引率

IASBは以下のことを暫定的に決定した。

 (1) 企業は引当金を、実質的に無リスク利子率を代表する、時間価値を反映する割引率で割り引くことを要求する提案を維持する(ただし、不履行リスク(non-performance risk)の影響を考慮しない)

 (2) IAS37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」に、企業が適切な無リスク割引率をどのように決定するかに関する適用指針を追加しないこと

 (3) IAS37号において、債務を履行するために必要な支出の最良見積りは不履行リスクの影響を反映して減額されないことを明確化すること

 (4) 引当金測定における実質利率または名目利率の使用に関して追加的な要件を設けないこと

2.割引率 — IFRS3号との相互関係

 (1) 初期測定の原則に対する例外を追加すること。これは以下に適用される。

  1. IAS37号の範囲内にあるが偶発負債ではない引当金に適用される、かつ
  2. 取得日において、これらの引当金を取得日におけるIAS37号の測定要件に従って測定することを取得者に要求する(取得日における公正価値ではない)

3.割引率 — 開示

IASBは以下のことを暫定的に決定した。

 (1) IAS37号を適用する企業に対して、引当金を測定する際に使用した割引率(複数ある場合はその各割引率)およびその率を決定する際に用いたアプローチを開示することを要求する提案を維持する

 (2) IAS37号に対してこれ以上の開示要件を追加しないこと

 (3) IFRS19号「公的説明責任のない子会社:開示」を適用する子会社に対して、引当金の測定に使用した割引率を開示させる提案を維持するが、当該割引率を決定する際に用いたアプローチの開示を子会社に要求しないことを維持する

IFRS解釈指針委員会(IFRIC)のアジェンダ決定

IASBは、IFRICの「超インフレ経済を識別する指標の評価」に関するアジェンダ決定を検討し、いずれのメンバーも決定に反対しなかった。

 

IFRS解釈指針委員会(IFRIC)最新決定の概要

以下は、2025916日に開催されたIFRICの会合における議論および決定から生じた主要事項の要約である。

9月のIFRICアップデートはこちらで入手できます。

 

委員会の暫定的アジェンダ決定
以下の暫定的アジェンダ決定は、20251125日までコメントを募集している。

グループ内金銭債務(または資産)から生じる為替差損益の分類(IFRS 18
委員会は、IFRS18号の第B65項を適用する場合に、グループ内金銭債務(または資産)から生じる為替差損益をどのように分類するかについての要請を受けた。連結上で当該金銭債務(または資産)に関連する収益および費用が消去されている場合にどのように分類されるべきかが問われた。委員会メンバー間で意見の相違はあったものの、委員会は基準設定プロジェクトを作業計画に追加しないことを決定した。

オフテイク契約に基づく電池の使用からの経済的便益(IFRS 16
委員会は、IFRS16号の第B9(a)の要件の適用、特に識別された資産の使用から実質的にすべての経済的便益を得る権利が顧客にあるかどうかを判断する方法についての要請を受けた。例として、電池のオフテイク契約において、電池所有者は電池を保管するが、電力小売事業者の指示に従って電池を運用する契約があり、その指示が電池の容量の100%をカバーし代替ができない場合が取り上げられた。委員会の見解では、IFRS16号の原則および要件は、電力小売事業者が電池の使用から実質的にすべての経済的便益を取得する権利を有するかどうかを判断するための十分な基盤を提供すると判断し、基準設定プロジェクトを作業計画に追加しないことを決定した。

その他の事項

IASBの「企業結合開示、のれん及び減損」プロジェクトに関する議論において、IFRICは次の点について見解を提供した。

  • 一部の情報の開示を免除することに関する提案の範囲の精緻化
  • 当該免除が適用され得る状況例の追加
  • CGUが再編、改善または強化され得る可能性を示す設例の作成

 

今月の質問

親会社と子会社間の債務免除

ある子会社はグループの一員であり、親会社は別の国に所在する。親会社は子会社の事業設立のために1,000万ドルの貸付を行った。現在、その貸付は免除される予定である。

 

質問:

この取扱いはどのように会計処理されるべきか?

非関連企業間の債務免除は通常、受領企業にとって収益、免除した企業にとって費用として処理される。しかし、両者が同一グループ内の企業である場合、取り扱いはより複雑となる。

会計の枠組みにおいて、所有者としての立場で行われる所有者との取引は、収益や費用を構成せず、したがって利益や損失を認識することはできない(「収益」「費用」の基本定義に該当しないため)。取引の実質は、親会社が子会社への投資を行ったことに相当する。

したがって、債務免除は親会社の単体財務諸表上では子会社に対する投資の取得原価の増加として認識され、子会社の単体財務諸表上では持分の増加として認識される。いずれの企業においても損益は認識されない。

これは各社の単体財務諸表に適用される取り扱いであり、親会社の連結財務諸表を作成する際には、上記取引は連結調整により消去される。

上記の事例は親会社と子会社間の取引に関するものであるが、同一の最終親会社の支配下にある企業間での類似の取引にも同じ原則が適用され得る。特に、債務を免除する子会社が最終的な共通親会社の指示に基づいて行動している場合には、その取引の実質は債務が免除される企業に対する資本の拠出であると評価される。

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