2025年度から適用される会計基準等の概要
Seiwa Newsletter Jul. 2025 (Vol.115)
「包括利益の表示に関する改正」、「特別法人事業税の取扱いに関する改正」及び「種類株式の取扱いに関する改正」の概要
RSM清和監査法人 公認会計士 滝口 達也
はじめに
今月のSeiwa Newsletterでは、2025年度から適用される会計基準等の概要として、「包括利益の表示に関する改正」、「特別法人事業税の取扱いに関する改正」及び「種類株式の取扱いに関する改正」を解説をいたします。こちらは、ASBJ(企業会計基準委員会)が2024年年次改善プロジェクトにおいて検出された事項について、企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告の改正を行ったものとなります。
包括利益の表示に関する改正
1. 改正の対象となる会計基準等
- 改正企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」
- 改正企業会計基準適用指針第9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」
2. 改正の目的
その他の包括利益の取扱いに関して、これまでに公表された複数の会計基準等で使用されている用語の一部が、連結財務諸表上の取扱いに関する記載に使用されるべき表現となっていなかったため、適切な用語に修正することが改正の目的となっています。
3. 主な改正の内容
- 包括利益の表示に関する会計基準
これまでに公表されている会計基準等で使用されている「純資産の部に直接計上」、「直接純資産の部に計上」及び「直接資本の部に計上」という用語について、連結財務諸表上は「その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上」と読み替えるものとされました。
- 株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針
株主資本等変動計算書において、株主資本以外の各項目の当期変動額は純額で表示しますが、主な変動事由ごとにその金額を表示する場合の例として「純資産の部に直接計上されたその他有価証券評価差額金の増減」等の用語が使用されており、当該用語は、個別株主資本等変動計算書と連結株主資本等変動計算書について共通で使用されるものでした。今回の改正では、連結包括利益計算書との連携が理解しやすくなるように、「当期発生額」及び「組替調整額」という用語に変更されています。
4. 適用時期
本改正は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度の期首から適用されます。早期適用に関しては、2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度の年度末に係る連結財務諸表から適用することができます。この場合、2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度に係る中間連結財務諸表及び四半期連結財務諸表については改正会計基準を適用しないこと、また当該連結会計年度に係る中間連結財務諸表については改正適用指針を適用しないこととなっています。
特別法人事業税の取扱いに関する改正
1. 改正の対象となる会計基準等
- 改正企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」
- 改正企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」
2. 改正の目的
本会計基準等は、具体的な税金を挙げて当該税金について規定する税法を参照することにより特定して会計処理及び開示について定めていますが、改正前の本会計基準においては、特別法人事業税の取扱いについて個別の定めが設けられていませんでした。そのため、特別法人事業税の取扱いの明確化を図ることが改正の目的となっています。
3. 主な改正の内容
- 法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準
特別法人事業税(基準法人所得割)は、事業税のうち所得割額を標準税率によって計算した金額に対して課す税金であるため、所得に対して課される税金である点では事業税(所得割)と共通の性質を有しています。この性質を考慮し、事業税(所得割)と同様の取扱いを行うことを明確化する定義追加等の変更が行われました。
また、「法人税、住民税及び事業税」が表示科目の例示であることをより明確にする表現変更も行われました。
- 税効果会計に係る会計基準の適用指針
法定実効税率の算式に特別法人事業税率が含まれることが明確化されました。また、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、決算日において国会で成立している法人税法等に規定されている税率を使用する旨が明確化されました
4. 適用時期
本改正は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用します。早期適用に関しては、2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。ここで、早期適用を行う場合であっても、当該連結会計年度及び事業年度の中間連結財務諸表及び中間個別財務諸表並びに四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表については、改正会計基準等を適用しないこととなっていますのでご留意ください。
種類株式の取扱いに関する改正
1. 改正の対象となる会計基準等
- 改正実務対応報告第10号「種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い」
2. 改正の目的
2001年(平成13年)の商法改正における種類株式制度の見直しによって、優先株式をはじめとした種類株式の内容が多様化するとともに、その発行金額が増加しました。しかし、本実務対応報告の適用対象となる種類株式に関する定めが旧商法の条文を参照したままとなっていたため、会社法第108条第1項を参照先に変更することが改正の目的となっています。
3. 主な改正の内容
本実務対応報告の適用対象となる種類株式の定義を、会社法第108条第1項を参照する形で定義し直しました。同条項により旧商法で認められていなかった種類の株式を発行することが可能となり、さらに設計の柔軟化が図られたことから、本実務対応報告の開発時には想定されていなかった種類株式まで適用対象が拡大します。
4. 適用時期
本改正は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後取得する種類株式について適用されます。早期適用に関しては、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首より前に取得した種類株式のうち、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の前連結会計年度及び前事業年度の末日において保有する種類株式については、次のいずれかの方法を選択できます。
- 従前の会計方針を継続
- 改正実務対応報告を2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の末日から将来にわたって適用
- 改正実務対応報告を2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から将来にわたって適用
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