はじめに

国際的な会計基準との整合性を図る観点から、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「新リース会計基準」)が2024913日に公表されました。202741日以後開始する事業年度の期首から適用され、202541日以後開始する事業年度の期首から早期適用も可能です。新リース会計基準の適用に伴い、令和7年度(2025年度)税制改正において法人税法等の改正が行われており、税務実務への影響が想定されますので、本ニュースレターでは、リース取引に関連する本税制改正の内容について解説します。

法人税法の改正による影響

1.借手の処理

(1)オペレーティング・リース取引に係る賃貸借取引の見直し

法人がオペレーティング・リース取引によりその取引の目的となる資産の賃借を行った場合において、税務上は引き続き賃貸借取引として支払賃借料(ただし、原価の額並びに固定資産の取得に要した金額とされるべき費用の額及び繰延資産となる費用の額を除く)を損金の額に算入することとされました。そのため、オペレーティング・リース取引については、会計上と税務上の取扱いが異なることから、別表4と別表5において申告調整が必要になります。具体的には、会計上の減価償却費と利息費用を加算し、上記の支払賃借料(債務が確定したもの)を減算します。

会計上の取扱い

税務上の取扱い

リースの区分

新リース会計基準

改正前

改正後

所有権移転ファイナンス・リース

・ リースの区分を廃止

・ 原則、全てのリースにつき、貸借対照表に使用権資産及びリース負債を計上

・ 使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を費用計上

リース資産の売買があったものとして、自己所有の減価償却資産と同じ償却方法により償却

所有権移転外ファイナンス・リース

リース資産の売買があったものとして、リース期間定額法により償却(下記(2)参照)

オペレーティング・リース

会計処理に従い、賃貸借取引として処理

(別段の定めなし)

引き続き、賃貸借取引として支払賃借料の額を損金算入(法人税法53

(2)リース期間定額法の見直し

202741日以後に締結された所有権移転外リース取引に係るリース資産の減価償却費(リース期間定額法)については、そのリース資産の取得価額に含まれている残価保証額を控除しないこととし、リース期間経過時点に1円(備忘価額)まで償却できることとされました。

(3)リース期間定額法の見直しに伴う経過措置

リース期間定額法の見直しに伴い、経過リース資産(1)については、その経過リース資産を有する法人の202541日以後に開始する事業年度において、リース期間定額法に代えて経過リース期間定額法(2)を選定することができる経過措置が講じられています。なお、経過措置の提供を受けようとする法人は、一定の事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。

1:リース資産についての所有権移転外リース取引に係る契約が2027331日以前に締結されたもの

2:経過措置の適用を受ける最初の事業年度において、取得価額から償却累計額を控除した改定取得価額をリース期間の終了まで定額で償却する方法

2.貸手の処理の見直し

新リース会計基準において割賦基準(第2法)が認められなくなったことを踏まえ、法人税法上のリース資産の譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例(延払基準の特例)は廃止されました。なお、延払基準の特例の廃止に伴い、202541日前にリース資産の譲渡を行ったことがある法人は、2027331日以前に開始した事業年度のリース資産の譲渡については、引き続き、延払基準の方法によることができるなどの経過措置が講じられています。

 

会計基準

税務上の取扱い

改正前

リース取引開始日に売上高(リース料総額)と売上原価(現金購入価額)を計上し、その差額を利息相当額(各期末後に対応する額は繰延べ)として処理する方法

会計上経理した金額を益金及び損金算入

(旧法人税法63

改正後

リース取引開始日に売上高(リース料から利息相当額を控除した額)と売上原価(帳簿価額)を計上し、各期の受取リース料のうち利息相当額を各期の損益として処理する方法

継続

(法人税法22222

改正前

受取リース料を各期において売上高として計上し、その金額から各期に配分された利息相当額を差し引いた額を売上原価として処理する方法

会計上経理した金額を益金及び損金算入

(旧法人税法63

改正後

廃止

適用なし

改正前

各期の受取リース料を利息相当額と元本回収とに区分し、利息相当額を各期の損益として処理する方法

会計上経理した金額を益金及び損金算入

(旧法人税法63

改正後

継続

継続

(法人税法22222

消費税法上の取扱い

消費税法上、リース取引がファイナンス・リース取引又はオペレーティング・リース取引のいずれかに該当するかは、所得税又は法人税の課税所得の計算における取扱いの例により判定するものとされています。先述のとおり、オペレーティング・リース取引は賃貸借取引として処理されるため、会計上のリースの区分と相違することになり、消費税に関する調整が必要になります。

リースの区分

貸手

借手

所有権移転ファイナンス・リース

リース資産の引渡し時に課税売上処理

リース資産の譲受け時に課税仕入処理

所有権移転外ファイナンス・リース

オペレーティング・リース

リース料の受領時に課税売上を処理

リース料の支払時に課税仕入処理

また、法人税法と同様に、ファイナンス・リース取引の貸手に認められていた延払基準の特例は廃止されましたが、202541日前にリース資産の譲渡を行ったことがある法人は、2030331日以前に開始した事業年度のリース資産の譲渡については、引き続き、延払基準の方法によることができるなどの経過措置が講じられています。経過措置の適用は延払基準で経理することが要件とされていますが、延払基準としてリース会計基準で定められた収益計上方法が認められているため、第1法~第3法のいずれの会計処理を採用した場合であっても経過措置を適用することができます。

段階

経過措置の適用対象

税務上の取扱い

1段階

2030331日以前に開始した事業年度に含まれる課税期間の既契約及び新規契約

延払基準に基づき課税売上処理(課税時期の繰延べ)

2段階

203041日以降に開始する事業年度に含まれる課税期間の既契約

残リース料を一括して課税売上処理又は10年均等で課税売上処理(課税時期の繰延べ)

参考文献

・  国税庁令和7年度法人税関係法令の改正の概要「新リース会計基準に対応する改正」

・  国税庁タックスアンサー「No.6163 リース取引についての消費税の取扱いの概要」

・  国税庁質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」

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