新リース会計基準等の適用に伴う経過措置の概要
Seiwa Newsletter Mar. 2026 (Vol.123)
新リース会計基準等の適用方法(容認法)について
RSM清和監査法人 公認会計士 鈴木 淳一
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はじめに
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「新会計基準」という)及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下「新適用指針」、新会計基準と新適用指針を併せて「新リース会計基準等」という)が2024年9月13日に企業会計基準委員会(ASBJ)から公表され、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。新リース会計基準等の適用に際しては、会計方針の変更として過去の期間のすべてに遡及適用する方法(原則法)がありますが、過去の期間における累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する方法(容認法)も認められています。適用時にいずれの方法を採用するかは適用準備の作業等に影響すること、また容認法を採用する場合には経過措置が認められていることから、本ニュースレターでは主に容認法を採用した場合の経過措置について解説します。
なお、本稿においては、セール・アンド・リースバック取引、借地権の設定に係る権利金等及び建設協力金等の差入預託保証金に係る経過措置の解説については割愛します。
適用初年度の遡及適用の方法
過去の期間のすべてに遡及する方法(原則法)のイメージ図

過去の期間における累積的影響額を期首の利益剰余金に加減する方法(容認法)のイメージ図

容認法を選択した場合には、以下の経過措置を選択することが認められています。
経過措置
リースの識別
リースの識別は新リース会計基準等で導入された考え方であり、従来の会計基準では置かれていなかった定めであるため、過去の期間のすべてに遡及適用することになると実務上の負担が大きくなります。そこで、新リース会計基準等では、以下のいずれか又は両方の経過措置を適用することができます(新適用指針第119項)。
リースの識別 | 従来のリース会計基準等を適用していたリース取引 | 新リース会計基準等におけるリースの識別を行わずに、新リース会計基準等を適用することができる。 |
従来のリース会計基準等を適用していなかった契約 | 適用初年度の期首時点で存在する事実及び状況に基づいて、新リース会計基準等に基づきリースの識別を行うことができる。 |
借手のファイナンス・リース取引に分類していたリース
従来のリース会計基準等でファイナンス・リース取引に分類していたリースについて、リース資産及びリース債務の帳簿価額並びに個々のリース資産に重要性が乏しい場合の例外的な賃貸借処理については、新リース会計基準等で以下の経過措置があります。(新適用指針第120項~122項)。
【借手】ファイナンス・リース取引に分類していたリース | 従来のリース会計基準等でリース資産及びリース債務を計上していたリース | 適用初年度の期首における使用権資産及びリース負債の帳簿価額として、従来のリース会計基準等におけるリース資産及びリース債務の帳簿価額を引き継ぐことができる。この方法はリース1件ごとに適用することができる。 |
重要性が乏しいと認められた場合に通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていたリース | 短期リース又は少額リースの定めにかかわらず、従来のリース会計基準等で適用していた賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を継続することができる。 ※短期リース及び少額リースの説明はVol.91参照 |
借手のオペレーティング・リース取引に分類していたリース等
従来のリース会計基準等でオペレーティング・リース取引に分類していたリース及び新リース会計基準等の適用により新たに識別されたリースについて、新リース会計基準等では以下の経過措置があります(新適用指針第123項~125項)。
【借手】オペレーティング・リース取引に分類していたリース等 | 適用初年度の期首における使用権資産の帳簿価額 | リース1件ごとに、以下のいずれかで算定するかを選択できる。 ① 新リース会計基準等がリース開始日から適用されていたかのような帳簿価額。ただし、適用初年度の期首時点の借手の追加借入利子率を用いて割り引く。 ② 下記のリース負債の帳簿価額と同額。ただし、適用初年度の前年度の期末日に貸借対照表に計上された前払又は未払リース料の金額の分だけ修正する。 |
適用初年度の期首におけるリース負債の帳簿価額 | 適用初年度の期首時点における残りの借手のリース料を適用初年度期首時点の借手の追加借入利子率を用いて割り引いた現在価値により算定することができる。 |
上記の経過措置を選択した場合、下記の(1)から(4)までの方法の1つ又は複数を適用することができます。これらの方法はリース1件ごとに適用することができます(新適用指針第124項)。
(1) 特性が合理的に類似した複数のリースに単一の割引率を適用すること
(2) 適用初年度の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースについて、上記の経過措置を適用せずに、短期リースと同様の方法で会計処理を行うこと
(3) 付随費用を適用初年度の期首における使用権資産の計上額から除外すること
(4) 契約にリースを延長又は解約するオプションが含まれている場合に、借手のリース期間や借手のリース料を決定するにあたってリース開始日より後に入手した情報を使用すること
貸手のファイナンス・リース取引に分類していたリース
従来のリース会計基準等によりファイナンス・リース取引に分類していた貸手のリース債権及びリース投資資産の帳簿価額等について、新リース会計基準等では以下の経過措置があります。(新適用指針第131項)。
【貸手】ファイナンス・リース取引に分類していたリース | 適用初年度の前年度の期末日におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額のそれぞれを適用初年度の期首におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額とすることができる。 ただし、貸手における販売益を割賦基準により処理している場合、適用初年度の前年度の期末日の繰延販売利益の帳簿価額は適用初年度の期首の利益剰余金に加算する。 |
貸手のオペレーティング・リース取引に分類していたリース等
従来のリース会計基準等では、「通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行う」ことのみを定めていました。一方、新リース会計基準等では収益認識会計基準との整合性も考慮し、原則として定額法で会計処理することとしました。この会計処理の変更は、主に不動産契約におけるフリーレントやレントホリデーの会計処理に影響が生じると想定されており、オペレーティング・リース取引に分類していたリース及び新リース会計基準等の適用により新たに識別されたリースについて以下の経過措置を置くことで、フリーレント期間が終了している不動産契約は修正を求められないことが考えられます(新適用指針第132条)。
【貸手】オペレーティング・リース取引に分類していたリース等 | 適用初年度の期首に締結された新たなリースとして、新リース会計基準等を適用することができる。 |
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