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はじめに

企業会計基準委員会(ASBJ)は、2026年6月2日に改正「金融商品に関する会計基準」等を公表しました。金融資産の消滅の認識要件に関する改正であり、特別目的会社(SPC)を活用して金融資産の流動化(オフバランス)を行っている会社にとっては大きな影響が想定されます。そこで今月のSeiwa Newsletterでは、金融商品会計基準及び関連する実務指針等の改正について解説します。早期適用も認められているため、足元で金融資産の流動化スキームを検討している、もしくは今後検討する予定がある場合はぜひ参考にしてください。

金融商品会計基準の改正の経緯、概要

改正前の金融商品会計基準第9項(2)では、金融資産の譲渡において、その譲受人が(注4)の要件を充たすSPCである場合、当該SPCが発行する「証券」の保有者を当該金融資産の譲受人とみなして第9項(2)の要件を適用するとされていました。

この点に関して、SPCに対して貸付けが行われる事例があることを踏まえて、「証券」の範囲を明確化することが企業会計基準諮問会議に提案されました。当該テーマ提案に関して議論が行われた結果、譲受人がSPCである場合の金融資産の消滅範囲の明確化について検討することが諮問会議より提言され、その後ASBJで審議が開始されました。

Ⅲ.金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識
2.金融資産及び金融負債の消滅の認識
(1)金融資産の消滅の認識要件

9. 金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは、次の要件がすべて充たされた場合とする。
(1) 譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること
(2) 譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること (注4)
(3) 譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと

(注4) 譲受人が特別目的会社の場合について
金融資産の譲受人が次の要件を充たす会社、信託又は組合等の特別目的会社の場合には、当該特別目的会社が発行する証券の保有者を当該金融資産の譲受人とみなして第9項(2)の要件を適用する。
(1) 特別目的会社が、適正な価額で譲り受けた金融資産から生じる収益を当該特別目的会社が発行する証券の保有者に享受させることを目的として設立されていること
(2) 特別目的会社の事業が、(1)の目的に従って適正に遂行されていると認められること

上述のとおりテーマ提案者からは「証券」の範囲について明確化するように提案されたものの、本質的には、SPCが発行する証券の保有者だけでなく、SPCに対する融資者も譲渡された金融資産から生じる収益を享受している場合、譲渡人が譲渡した金融資産の消滅の認識をどのように評価するかが課題であると考えられました。 ここで本会計基準第9項(2)の要件の趣旨を確認すると、当該要件は、投下したキャッシュ・フローの対価として譲渡された金融資産から生じるキャッシュ・フローを譲受人が実質的に受け取ることができるかどうかにより評価することを求めるものであると考えられます。また、改正前の(注4)の趣旨は、譲受人が一定の要件を充たしたSPCの場合には、金融資産を直接的に譲り受けたSPCではなく、SPCが発行する証券の保有者の観点から、譲渡された金融資産から生じるキャッシュ・フローを実質的に受け取ることができるかどうかの評価を求めるものであったと考えられます。これらの趣旨を踏まえると、譲渡された金融資産から生じるキャッシュ・フローを実質的に受け取ることができるかどうかという観点からの評価においては、SPCが発行する証券を保有している投資者とSPCに対して貸付けを行っている融資者とで異なる取扱いを設ける特段の理由はないと考えられます。このため、本改正において、改正前の「・・・が発行する証券の保有者」「・・・に対する投資者又は融資者(投資者等)」へ改正することで、SPCに対する融資者をSPCに対する投資者と同様に取り扱うこととしました。

なお、本会計基準(注4)の適用において、「事業目的を遂行する上でキャッシュ・フローを調整するための借入れ(例えば、証券を完売するまでの借入れ、又は特別目的会社に対する投資者等への配当、利払い及び償還等のための借入れ)を行う場合」(金融商品実務指針第35項④)におけるSPCに対する融資者は、一時的な資金提供を行う者であることから、SPCに対する投資者等には該当しないと考えられます。

関連する会計基準・実務指針の改正

(1)金融商品会計に関する実務指針

金融商品実務指針第40項では、金融資産の譲渡人が譲渡先であるSPCが発行する証券等を保有する場合、証券等の保有者が譲受人とみなされ、譲渡人が譲受人となるから当該保有部分の譲渡はなかったものとする旨が定められていますが、ここでも融資者を投資者と同様に取り扱うことが明示されました。

(2)連結財務諸表に関する会計基準

連結会計基準第7-2項では、SPCが、適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該SPCが発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該SPCの事業がその目的に従って適切に遂行されているときは、当該SPCに資産を譲渡した企業から独立しているものと認め、当該SPCに資産を譲渡した企業の子会社に該当しないものと推定する旨が定められていますが、SPCが子会社に該当するかどうかの評価についても、SPCに対する投資者と融資者を同様に取り扱うことが明確化されました。

適用時期等

(1)適用時期

本改正は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される金融資産の譲渡から適用されます。SPCを譲受人とする金融資産の譲渡を行う企業は、通常、会計上の取扱いを十分に検討した上でスキームを構築していると考えられ、本改正は、検討を進めている金融資産の譲渡の会計処理に影響を与える可能性があり、一定の準備期間が必要と考えられたためです。

また、上記の定めにかかわらず、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後実施される金融資産の譲渡から本改正を適用することができます。できる限り速やかに適用可能とすることに対するニーズが存在することが考慮されたためです。

(2)経過措置

本改正の適用初年度において、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱います。ただし、本改正の適用前に実施された金融資産の譲渡に係る従前の取扱いは、本改正の適用後においても継続し、本改正の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行いません。これは、本改正の適用に関して、適用開始前に実施された金融資産の譲渡の会計処理を見直すかについて検討が行われた結果、SPCを譲受人とする金融資産の譲渡を行う企業は、通常、会計上の取扱いを十分に検討した上でスキームを構築していると考えられるため、スキーム実行時に想定していなかった会計処理となるように遡って見直すことは、原則として求めるべきでないとの結論に至ったためです。

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